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世界遺産になったビキニ環礁
約20年前に取材で行ったときは、立ち入り禁止地帯だった
核廃絶に日本外交が真価を発揮する好機ではないか

 ビキニ環礁が世界遺産に指定された。約20年前、真珠湾50周年企画の取材で太平洋戦争の跡をルポするために、マーシャル島を訪ねたことがある。ビキニ環礁は立ち入り禁止だった。
 マーシャル島は、サンゴ礁に囲まれ、太平洋の真珠の首飾りをいわれるほど美しい島だったが、太平洋戦争を機に島は趣を変えてしまった。
 ビキニ環礁ではアメリカが70回近くに及ぶ原水爆実験を繰り返し、放射線汚染が拡大した。雨水にたまった死の灰を飲んだ原住民たちの多くが原爆症にかかった。
 生まれてくる子供たちは”風土病”といわれる奇妙な病気をもった子が多かった。
 マーシャル島のサンゴの海は観光ガイド上の話にすぎず、現実には汚水やごみで汚れており、とても海水浴ができるような海ではなかった。
 
 かつてビキニ環礁の核実験で日本のマグロ船が被爆して船員一人がなくなり、しばらくマグロが食べられなくなったことを、子供時代の恐怖体験として覚えている。
 
 太平洋戦争の激戦地取材以上に、ビキニ環礁核実験の後遺症のすさまじさに驚いたので、急きょ、取材の目的をビキニの放射線汚染に切り替えた。すると取材先のいたるところで、現地人以外の米国人が現れて、こちらが頼みもしない資料やデータをたくさんくれた。たぶんCIAかなにかの人なんだろうと思った。

 ビキニ環礁に興味がおありなら、お連れしますよ、と誘われたりしたが、そういう相手が何者かわからず、少し気味が悪かったので断った。
 世界遺産に指定されたいま、短期の滞在なら自由にできるし、リゾートホテルもあるというから、隔世の観がある。しかしもともとビキニ環礁に住んでいた原住民はいまだに帰島できないようだ。

 オバマ大統領の核廃絶演説いらい、世界の核軍縮の流れが加速し始めている。今年の広島の原爆記念日の式典には、初めて国連事務総長や駐日米国大使も出席する。
 核廃絶の世界世論が高まり、核兵器を持つすべての国が同じ志を持つなら好ましいことだ。しかし超大国の核に対抗して自らも核を保有しようとする後進国も少なからず存在する。
 ビキニ環礁の世界遺産指定を機に、核廃絶で日本がリーダーシップを発揮する好機が来ている。 
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