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海外メディアが伝えた原発の真実
不都合な真実を見ずに、ネット規制をたくらむ菅政権の愚挙


 世界が震災と津波と自然の残酷さに打ちひしがれていたとき、もうひとつの人工物の未曾有の災害の連鎖に驚愕した。

 福島電発事故は電源の喪失による冷却の機能不全のために炉心冷却ができず、原子炉の温度があがり建屋に水蒸気が溜まって水素爆発を起こし、照射能がわずかに外部に漏れている可能性があると、東電は説明、政府も東電説明に従った。炉心圧力を減らすために、ベントという放出を行うが、安全だから心配ない、と官房長官は言明した。

 放射線漏れはわずかな量で、人体にも食物にも影響ない低レベルという説明に、データを持たない国民はそれを信じるしかなかった。

 しかしその後の無残な展開は、いまや全世界と国民の前に明らかである。マスコミに動員された御用学者たちの無理やり安全宣言もむなしく潰え去り、ついでに技術大国・日本の技術神話も崩壊した。 
 新幹線や原発技術を世界に売り込んで不況からの脱却を目指していた日本の打撃は大きいが、自己過信と実力のギャップに、いまようやく気がつかされたというところだろう。 

 東電(および政府)は想定外の津波だったと補償逃れの弁明を行ってきた。テレビではあまり見ない歴史の学者が急に出てきて、今回の地震は平安朝に起こった大地震と同等の規模で1000年の一度の規模だと説明し、東電の「想定外」を支援していた。
  しかしちょっと調べるだけでも、明治29年に起こった明治三陸地震では、M8.2−8.5、38.2メートルの大津波の記録がある。1000年に一度、というのは嘘だろう。
 昭和にも三陸大地震は起こっている。  日本の記者クラブメディアは、たまにはスクープもあるが、おおむね東電や保安院、官房長官の発表を垂れ流しており、放射能は漏れているが安全だ、という主張を繰り返していた。
 
  欧米諸国は日本政府や東電に頼らずに独自のデータを持っていた。米国のクリントン国務長官は日本側が公表するデータに信頼性がない、と不信感を表明した。
 ロシアも同様の見解で極東地域に隣接する国土の放射能汚染の監視を強めた。北欧諸国は独自の放射線データをインターネットに公表した。
 
  にもかかわらずデータを持たない国民は騙され続けていた。そんな国民の蒙を破ってくれたのは、海外のメディアである。
 米国のニューヨークタイムズ,ワシントン・ポスト、ABC,CNN,英国のBBC、ロイター通信、フランスのル・モンド、ドイツのシュピーゲルといった欧米の一流メディアである。

 中でも衝撃だったのは、ロイター通信の以下のスクープ記事だ。やや長いが以下に引用する。 

 (取材協力:Kevin Krolicki, Scott DiSavino 編集:北松克朗)(敬称略)

 「津波の影響を検討するうえで、施設と地震の想定を超える現象を評価することには大きな意味がある」。
 こんな書き出しで始まる一通の報告書がある。東京電力の原発専門家チームが、同社の福島原発施設をモデルにして日本における津波発生と原発への影響を分析、2007年7月、米フロリダ州マイアミの国際会議で発表した英文のリポートだ。
  この調査の契機になったのは、2004年のスマトラ沖地震。インドネシアとタイを襲った地震津波の被害は、日本の原発関係者の間に大きな警鐘となって広がった。

 とりわけ、大きな懸念があったのは東電の福島第1原発だ。40年前に建設された同施設は太平洋に面した地震地帯に立地しており、その地域は過去400年に4回(1896年、1793年、1677年、1611年)、マグニチュード8あるいはそれ以上と思われる巨大地震にさらされている。  

 こうした歴史的なデータも踏まえて、東電の専門家チームが今後50年以内に起こりうる事象を分析。その報告には次のような可能性を示すグラフが含まれている。
  ―福島原発は1―2メートルの津波に見舞われる可能性が高い。
  ―9メートル以上の高い波がおよそ1パーセントかそれ以下の確率で押し寄せる可能性がある。    ―13メートル以上の大津波、つまり3月11日の東日本大震災で発生した津波と同じ規模の大災害は0.1パーセントかそれ以下の確率で起こりうる。
  そして、同グラフは高さ15メートルを超す大津波が発生する可能性も示唆。リポートでは「津波の高さが設計の想定を超える可能性が依然としてありうる(we still have the possibilities that the tsunami height exceeds the determined design)」と指摘している。 
 
 今回の大震災の発生を「想定外」としてきた東電の公式見解。同リポートの内容は、少なくとも2007年の時点で、同社の原発専門家チームが、福島原発に災害想定を超えた大津波が押し寄せる事態を長期的な可能性として認識していたことを示している。 
 
   原発推進という利害のもとで、密接な関係を築いてきた経産省・保安院と電力会社。ともに原発の危険シナリオを厭(いと)い、「安全神話」に共存する形で、その関係は続いてきた。だが、監督官庁と業界の密接な関係は、ともすれば緊張感なき「もたれ合い」となり、相互のチェック機能は失われていく。その構図は1990年代の「金融危機」と二重写しのようでもある。



 このロイター記事を読んで衝撃を受けた。この記事は、東電内部で作られたレポートが米国で発表されたのに、東京の本社で握りつぶされていたとする詳細な調査報道である。

 日本のマスコミが毎日、東電、保安院、官房長官の記者会見を繰り返しながら、何一つ焦点の定まらない記事を垂れ流し続けたのと比較して、読者はどう思うだろうか。

 東電、政府はついに放射性物質の汚染水の海洋投棄を始めた。全世界が仰天し、国際法に違反するのではないかと、韓国から日本政府は無能、と怒りの抗議が来た。

 米国CNNは日本政府はよほど追いつめられている、と専門家のコメントを流した。

 東電と日本政府だけでは解決できないと考えたフランスからはサルコジ大統領が、急きょ、来日、フランスの核燃料公社のトップが助っ人にやってきた。

 トモダチ作戦で地震の被災者を救援し続けたいた米軍も原発との戦いに参戦した。米軍からも核の専門家チームが来た。
 
 しかしいまだに解決のメドはない。史上最悪の事故といわれるチエルノブイリでも10日で放射能漏れが止まった。  

 サルコジ大統領の知恵袋といわれる元大統領補佐官のジャック・アタリ氏が、仮に日本の主権を侵害したとしても、福島原発の事故を止めるために、国際社会は介入すべきである。あらゆる”武器”を使うべきだ、と提言している。それが日本と人類を救う道だ、と。

 このままの状態が継続し日本が自立解決できずに放射能物質を流出し続ければ、福島原発は国際管理下の状態に移行させられるかもしれない。

 北朝鮮核疑惑、イラン核疑惑でわかるように、国際社会は核物質の流出にはきわめて敏感なのである。

 こうして国民の騙されていると感じた不安はどんどん増大し、マスコミが報道しない事実を求めて、ソーシャルメディアやツイッター、ネットに集まってきた。

 自分たちの健康と命が関わっているのである。  ネット上では様々なデータが交換され、ツイッターで国民の不安が書き込まれ、被災地の困窮が書き込まれた。それにより、政府、東電に対する不信感が飽和的に蓄積されていった。

 その挙句、政府はネットを検閲し、不都合な書き込みを削除するように、警察を通じて関係業者に要請した模様だ。ちょっと考えればわかることだが、この政府の行為はあからさまな憲法違反だ。
 
 ツイッターやフェースブックで起こされたエジプト、チュニジア、リビアの民衆革命を菅政権は恐れたのだろうか。自ら情報を閉ざし、マスコミで情報を操作したが失敗し、世界と国民を敵としたカダフィと同じ失敗を犯すのではないか。  

 国民は神経衰弱になるほど心配している。 早く原発事故を収束させて、被災地の本格支援をしたいと国民は心から願っている。

 ネットやブログやツイターを規制すれば、ものごとがうまくゆくと考えている菅政権は何という狭量で浅はかな政権なのだろうか。 
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