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産経のソウル支局長訴追事件
  報道ビザは何のためにあるか      ジャーナリスト 柴山 哲也
 

産経新聞のソウル支局長の大統領の名誉棄損訴追事件は、メディアの自由に対する韓国検察の侵害という意見が、日本のマスコミや官房長官など政府首脳からも出ている。
 タテマエとしてはそうだろうが、やや違和感を禁じえない。

 産経記事は、韓国大統領が客船事故のさなかに男性と密会していたというスキャンダルを報道したものだが、この話は噂をもとにして韓国の新聞の間では報じられていたようだ。産経は韓国の新聞をもとに記事を書いたというが、噂話の裏を取ったかどうか。しっかりした裏の証拠(たとえば当該時間帯の密会中の写真など)があれば、韓国検察といえども起訴はできないはずだ。事実認定ができれば、言論弾圧だと声高に訴えることができるが、そこらへんがどうも判然としないまま、今や日韓の争いになってきるが、要するに事実関係がどうなっているか、どっちが先にこれを証明できるかどうかにかかっている。
 
 私も多くの海外取材をしてきた経験がある。韓国より遥かに記者に厳しい北朝鮮にも行ったし、社会主義原理主義の独裁国だったアルジェリアの取材もした。アルジェリアでは報道ビザで大変な苦労をしたこともある。
 海外での記者の取材には報道ビザが必要なのだ。これは独裁国や社会主義国に限らず、韓国や中国、アメリカ、フランス等の欧米諸国でも同じだ。報道ビザを取らずに観光などで記者が入国することも多いが、取材上や記事で問題が起こればその国から訴追される。

 外国で報道ビザを持って取材しているときは、ある種の緊張感がある。うっかり軍事施設や政府施設に入りこんだりするとスパイ視されることもある。記事を書いて原稿を日本に送るときも検閲されていることを想定して書くことが多い。
 要するに記事を書いて面倒に巻き込まれる怖れがあると考えたときは、踏み込んだ記事を書く場合には帰国してからにするという判断が働く。日本にいるときとは違う、あくまで外国で報道ビザを取得して記事を書いているという自覚が必要なのだ。

 産経記者にはこういうデリケートな問題に対するセンスがどれほどあったのだろうか。一国の大統領の名誉にかかわる噂を外国の記者が記事にする場合は、より慎重な判断が必要だったのではないか。報道ビザがなぜ発行されているのか、ということに無神経だったのではないかと思う。

 もうひとつある。日韓関係が正常な状態ではないことも念頭にいれなければならない。また朴韓国大統領が一番、気にしている従軍慰安婦問題で産経は韓国を叩く急先鋒の主張をしている。韓国政府や世論を逆なでしていること、それがための反発も自覚しておく必要があった。
 日本にいれば産経の主張は安倍内閣のお気に入りで、朝日叩きでも何でも好きに自由にやれるが、外国では日本と同じようにはゆかないことに気がつく必要がある。
 また産経の主張は日本国内では言論の自由を軽視し、海外では言いつのる、というダブルスタンダードを感じさせることが多いことを付記しておく。                   
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