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朝日に強力な助っ人現れる
外国特派員協会からの警告だ
                       柴山 哲也
 約30年も前の従軍慰安婦の記事で自国のメディアの袋叩きにあい、意気消沈の朝日新聞に予想外の強力な助っ人が現れた。見るに見かねてか?欧米の自由の国のジャーナリストたちの怒りが爆発したのかもしれない。
 日本外国特派員協会が発行する雑誌『SHIMBUN』11月号である。月刊のこの英語雑誌は毎月20過ぎに会員各社、世界各国へと配布される。日本外国特派員協会は欧米各国の特派員を中心に世界中の有力メディアの記者が加入している。一か月の日本の大ニュースが詰まっている。
 まずは今回送られてきた11月号の表紙を見ていただきたい。

 
表紙の画像「朝日を撃沈せよ!」という過激なタイトルで、例の8月5日付けの記事取り消し・訂正紙面が紙の舟のような折り紙状で、水面に浮かんでいる。紙舟は空爆されて船体の半分は炎上し黒煙が噴き出ている。空から3つの爆弾が落とされているのがわかるが、その爆弾には「読売」、「産経」の文字が書いてあり、もうひとつの爆弾には安倍氏に見える顔がある。
 記事の中身はさらに激しい。ロス郊外に建てられた従軍慰安婦像の撤去を執拗に求める日本の外交運動を紹介しながら、これが日本の右翼による朝日攻撃に転化した理由や日本右翼のナショナリズムが台頭する背景をレポートしている。問題は従軍慰安婦の強制性にのみあるのではない、ということだ。
 朝日攻撃の先には「河野談話の取り消し」「国連人権委のクワラスワミ報告」の撤回を右翼が画策していると記事は主張する。要するに、狙いは来年の第二次世界大戦70周年で、戦勝国の米英仏ロ諸国をはじめ、中国、韓国、北朝鮮などのアジア諸国からの戦争犯罪を蒸し返されることを怖れた歴史修正主義者らの右翼勢力が、手始めに朝日を叩いている構図と、いうわけである。敵は「本能寺にあり」という類の解説なのである。

 外国特派員協会の特派員たちは、朝日が30年以上も前に書いたというこの過去の記事のことを全くしらなかったという。また一連の従軍慰安婦記事を朝日が書いたことを知っていた記者もいないようだ。
 しかし従軍慰安婦と性奴隷の差異をさほど意識していない外国のジャーナリストたちは、独自の取材によって韓国、中国、旧オランダ領インドネシア、フィリッピンなどを調査してきた。従軍慰安婦は日本のマスコミの”専売特許”ではなく、国際戦争犯罪の問題として世界中のジャーナリストの取材対象であることを日本人は忘れているのか、といわんばかりの内容である。なめるな、外国ジャーナリストもちゃんとこの問題を取材してきたんだぞ、というのだ。
 朝日を叩いて「強制性の有無」にこだわる日本の立場はコップの中の嵐にしか見えていない。この歴史修正主義の嵐に読売、産経のほかに政権党までが参加していることに、外国人ジャーナリストは驚きを隠さない。
 
 かつて『ニューヨーク・タイムズ』がペンタゴン機密文書をスクープし、『ワシントン・ポスト』がウォーターゲート事件をスクープして、ベトナム戦争終結させるきっかけを作り、ニクソン政権を崩壊させたとき、他のライバル紙やテレビ、有力週刊誌など全米のマスコミは仲間を擁護し、政権からの攻撃からスクープした新聞を守った。
 それにより米国の新聞も週刊誌も発行部数が伸び、全米のテレビ局の視聴率は上がり、全マスコミが経営的にもハッピーな日々を手に入れたのである。ライバルの仲間を叩き、仲間を敵に売らなくても発行部数は増え、視聴率は伸び、CMもたくさん入ってきた。
 マスコミは自分のプロとしての役割に忠実になり、読者、視聴者にまっすぐ向き合えば、マーケットも拡大する。
 この簡潔なマスコミ論を知らない日本のマスコミは、マーケットは権力側の手中にあるものと勘違いして、仲間を叩き、ライバルのマーケットを奪い、いずれまた自分も叩かれることに怯えているのではないか。
 だから、背後から朝日を擁護する大新聞もテレビ局も出て来ない。学童のクラスのようにターゲットを虐める側にいないと、いつ自分がターゲットにされるかわからない。みな戦々恐々なのである。
 グローバルスタンダードも理解していない日本のマスコミは、いつまでたってもハッピーにはなれるわけはないのだ。これを肝に銘じるための外国特派員からの警告と受け止めたい。

 
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