2007.06.11 Monday
ダイアナ事故死10年の真実、加熱した英国のメディア
ダイアナ元妃の事故死から10年。イギリス在住の高井祐介氏から、英国メディアの加熱報道と喧噪ぶりを伝えてもらいました。
高井祐介のロンドン便り(7)
事故車内の酸素マスク写真掲載に世論は侃々諤々
いまだにくすぶる真相めぐる疑惑
1997年にダイアナ元妃が悲劇的な死を遂げてから、今年で10年。英国のテレビ局Channel4は6日、「Dinana: The Witnesses in the Tunnel」と題し、事故の真相を究明する番組を放送しました。この放送前、事故直後のダイアナ元妃の写真が番組で使われている事が判明し、放送の是非をめぐり論争が巻き起こっていました。しかし、ふたを開けてみれば問題になるほど衝撃的な写真はなく、番組自体は秀逸なドキュメンタリーといえる仕上がりでした。
当時、ダイアナ元妃の乗った車を追いかけていた「パパラッチ」と呼ばれるカメラマンたちが、事故を誘発したと世界中から激しい非難を浴びました。しかし、その後、ドライバーの飲酒運転が明らかになり、様々な陰謀説も飛び交って、結局、事故の真相については今も見方が分かれています。番組では原点に戻り、カメラマンや目撃者の証言から事故直後の状況を再検証するのが狙いだったようです。BBCによれば、380万人が番組を視聴したそうです。
番組内容には何も目新しいものはなかった、という辛口の批評もありますが、出演者らの証言は10年経った今も鮮明で、実際の写真と再現映像も交じって、現場の緊迫感が伝わってくるようでした。また、いくつかのエピソードにも興味を引かれました。
事故直後のダイアナ元妃の写真はその夜、一瞬にして価格がつり上がり、その死が伝えられた直後に商品価値を失った(もはや紙面掲載できないため)と、大衆紙「サン」の編集者は語りました。そして、ダイアナ死亡は死後もすぐには公表されず、英国大使館職員が病院の壁にもたれかけ崩れ落ちる様子を見てダイアナ元妃の死を確信したと、あるカメラマンは証言。また、パパラッチへの非難が高まる中、MI5の職員があるカメラマン宅を訪れ、命の危険を伝えていたと言います。
問題の写真は、ダイアナ元妃が酸素マスクをつけ応急処置を受けている現場だったようですが、番組では顔の部分に画像処理が施されており、また画質も良くなかったため、正直な所、解説なしでは何の写真なのかも分かりませんでした。この写真はフランス人のカメラマンにより撮られたもので、すでに昨年、イタリアの新聞に掲載されていました。
では、その写真が何故それほどの論争を招いたのでしょうか。発端はガーディアン紙による報道でした。その後、ウィリアム、ハリー両王子が写真の削除を求めたために一気に騒ぎは拡大。保守党議員などからは、公共放送としての自覚が足らないなどの批判が起こりました。また、Channel4はその騒ぎを番組宣伝のために利用しているという見方もありました。
しかし、Channel4は番組放送には公益があるとして、あくまでそのまま放送する姿勢を取ってきました。
高井祐介のロンドン便り(7)
事故車内の酸素マスク写真掲載に世論は侃々諤々
いまだにくすぶる真相めぐる疑惑
1997年にダイアナ元妃が悲劇的な死を遂げてから、今年で10年。英国のテレビ局Channel4は6日、「Dinana: The Witnesses in the Tunnel」と題し、事故の真相を究明する番組を放送しました。この放送前、事故直後のダイアナ元妃の写真が番組で使われている事が判明し、放送の是非をめぐり論争が巻き起こっていました。しかし、ふたを開けてみれば問題になるほど衝撃的な写真はなく、番組自体は秀逸なドキュメンタリーといえる仕上がりでした。
当時、ダイアナ元妃の乗った車を追いかけていた「パパラッチ」と呼ばれるカメラマンたちが、事故を誘発したと世界中から激しい非難を浴びました。しかし、その後、ドライバーの飲酒運転が明らかになり、様々な陰謀説も飛び交って、結局、事故の真相については今も見方が分かれています。番組では原点に戻り、カメラマンや目撃者の証言から事故直後の状況を再検証するのが狙いだったようです。BBCによれば、380万人が番組を視聴したそうです。
番組内容には何も目新しいものはなかった、という辛口の批評もありますが、出演者らの証言は10年経った今も鮮明で、実際の写真と再現映像も交じって、現場の緊迫感が伝わってくるようでした。また、いくつかのエピソードにも興味を引かれました。
事故直後のダイアナ元妃の写真はその夜、一瞬にして価格がつり上がり、その死が伝えられた直後に商品価値を失った(もはや紙面掲載できないため)と、大衆紙「サン」の編集者は語りました。そして、ダイアナ死亡は死後もすぐには公表されず、英国大使館職員が病院の壁にもたれかけ崩れ落ちる様子を見てダイアナ元妃の死を確信したと、あるカメラマンは証言。また、パパラッチへの非難が高まる中、MI5の職員があるカメラマン宅を訪れ、命の危険を伝えていたと言います。
問題の写真は、ダイアナ元妃が酸素マスクをつけ応急処置を受けている現場だったようですが、番組では顔の部分に画像処理が施されており、また画質も良くなかったため、正直な所、解説なしでは何の写真なのかも分かりませんでした。この写真はフランス人のカメラマンにより撮られたもので、すでに昨年、イタリアの新聞に掲載されていました。
では、その写真が何故それほどの論争を招いたのでしょうか。発端はガーディアン紙による報道でした。その後、ウィリアム、ハリー両王子が写真の削除を求めたために一気に騒ぎは拡大。保守党議員などからは、公共放送としての自覚が足らないなどの批判が起こりました。また、Channel4はその騒ぎを番組宣伝のために利用しているという見方もありました。
しかし、Channel4は番組放送には公益があるとして、あくまでそのまま放送する姿勢を取ってきました。
この写真のどこが問題なの?
Channel4の番組ホームページにある掲示板には放送直後、「これのどこが問題なの?」という意見がいくつか見受けられました。また、Channel4はこの番組放送に関する討論番組をその日のうちに組みましたが、写真自体に対する抗議は放送反対派からもそんなに聞かれませんでした。英王室も現時点では何もコメントは出していないようです。
一方、放送賛成派は、ケネディ暗殺の映像を比較に挙げ、ダイアナ元妃の事故写真の持つ歴史的意味を主張していました。1963年にダラスでのパレード中に銃弾を受け倒れるケネディ大統領の映像は、おそらく親族などからみれば今も辛い映像でしょうが、繰り返しテレビで放送されています。それが正当化されている(少なくとも問題化しない)のは、ケネディ暗殺がすでに歴史の一部になっているためでしょう。番組は、現在になってダイアナ元妃の写真が流出し始めたという事実が、事故が歴史となり始めていることを示していると結びました。
しかし、たとえダイアナ元妃の死が歴史になろうとも、現在の英国タブロイド紙などを見ていると、パパラッチ被害はますます拡大する一方。少し前のウィリアム王子と交際相手の女性との破局報道では、その原因が過熱報道だったという見方もあり、一般人であるその女性が家から出た所をパパラッチが取り囲んで写真を撮りまくるニュース映像が流されていました。また、ヒュー・グラントのような「お上品」な映画俳優でさえも付きまとうパパラッチにキレて反撃し、逮捕されるというニュースもあり、世間を驚かせていました。
ダイアナ元妃の事故検証ドキュメンタリーは、パパラッチによるプライバシー侵害とメディアのセンセーショナリズムという問題は十分に掘り下げず、どちらかというとパパラッチを擁護していると受け取られても仕方ないような印象も受けました。しかしながら、ダイアナ元妃の事故死から何を学ぶべきか、もう一度考え直す良い機会にはなったと思います。
以下のホームページはご参考までに。
http://www.channel4.com/culture/microsites/D/diana/?intcmp=homepage_flash
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6721789.stm
(たかい・ゆうすけ 東京中日新聞記者、外務省を経て現在、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで ジャーナリズムを研究中、本会会員)
Channel4の番組ホームページにある掲示板には放送直後、「これのどこが問題なの?」という意見がいくつか見受けられました。また、Channel4はこの番組放送に関する討論番組をその日のうちに組みましたが、写真自体に対する抗議は放送反対派からもそんなに聞かれませんでした。英王室も現時点では何もコメントは出していないようです。
一方、放送賛成派は、ケネディ暗殺の映像を比較に挙げ、ダイアナ元妃の事故写真の持つ歴史的意味を主張していました。1963年にダラスでのパレード中に銃弾を受け倒れるケネディ大統領の映像は、おそらく親族などからみれば今も辛い映像でしょうが、繰り返しテレビで放送されています。それが正当化されている(少なくとも問題化しない)のは、ケネディ暗殺がすでに歴史の一部になっているためでしょう。番組は、現在になってダイアナ元妃の写真が流出し始めたという事実が、事故が歴史となり始めていることを示していると結びました。
しかし、たとえダイアナ元妃の死が歴史になろうとも、現在の英国タブロイド紙などを見ていると、パパラッチ被害はますます拡大する一方。少し前のウィリアム王子と交際相手の女性との破局報道では、その原因が過熱報道だったという見方もあり、一般人であるその女性が家から出た所をパパラッチが取り囲んで写真を撮りまくるニュース映像が流されていました。また、ヒュー・グラントのような「お上品」な映画俳優でさえも付きまとうパパラッチにキレて反撃し、逮捕されるというニュースもあり、世間を驚かせていました。
ダイアナ元妃の事故検証ドキュメンタリーは、パパラッチによるプライバシー侵害とメディアのセンセーショナリズムという問題は十分に掘り下げず、どちらかというとパパラッチを擁護していると受け取られても仕方ないような印象も受けました。しかしながら、ダイアナ元妃の事故死から何を学ぶべきか、もう一度考え直す良い機会にはなったと思います。
以下のホームページはご参考までに。
http://www.channel4.com/culture/microsites/D/diana/?intcmp=homepage_flash
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6721789.stm
(たかい・ゆうすけ 東京中日新聞記者、外務省を経て現在、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで ジャーナリズムを研究中、本会会員)
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